不朽の名作『COJI-COJI』

『COJI-COJI(コジコジ)』はさくらももこ著の漫画で4巻までが発売されている。

元々、さくらももこの作品はほぼ全て読破している私だが、最近まで『COJI-COJI』は読んでいなかった。なんとなく現実離れしている表紙の絵を見て、読まなくても別によかろうと思っていた。ただ、高校卒業後に行った友人数人との旅行で好きな漫画は何かという話題になった時に、普段クールで物静かなキャラクターだった友達がボソっと、理由は特に述べずに『コジコジ』とつぶやいたことを20年間気にしていた。何か機会があれば読みたいなと思っていた。

何の機会があれば読むだろうかということはさておき、20年も読まないでいたのだが、昨年どうしても気を紛らわしたい時期があり、現実離れしていて、かつ頭を使わなくても平易に読めるマンガを読みたいと猛烈に思った時にポチったのが『COJI-COJI』である。

『COJI-COJI』は人間関係の縮図と言ってもいい。陽気な者、陰気な者、意地悪な者、純粋な者、お金持ち(王様)、貧乏、鈍感、繊細、さまざまなキャラクターが半魚鳥(文字通り半分魚で半分鳥)や、神様など人間ではない形で描かれている。唯一登場する人間はブルガリア出身のジョニーだけという設定であり、魔法が使えないマイノリティとして、さらに過去の人間界での記憶をなくしてしまったハンデを負ったキャラとして登場する。そんなわけで、ジョニーの性格は先天的なのか後天的なのかとにかく暗いのだが、ジョニーに密かに想いを寄せる者もいる。そしてその光景を見ていると何となく温かい気持ちになるのだ。

私はPIXERのモンスターズ・ユニバーシティーというアニメ映画のファンなのだが、ダイバーシティ(多様性)という意味で本作とは通じるものがあり、映画のDVDを何度も見たように、風呂の中で『COJI-COJI』を何度も読んだ。電子書籍でも作品の面白さは変わらないだろうが、紙で購入した本は風呂に持ち込んで読める利点がある。リラックスをする効果は『COJI-COJI』ありの風呂となしでは雲泥の差であるのと、読めば読むほどに風呂の蒸気を吸ってベコベコになっていく紙の質感もまた、何度読んでるんだ?と自分に問いかけてくるようで趣深く、紙のベコベコ度合いは脳の疲労度合いを可視化してくれているようでもある。うん、疲れてるね!

さくらももこの作品の醍醐味はスターにスポットライトが当たっていないことにあると思う。地味の中の地味が鈍く輝くように作品は描かれている。そしてどのキャラクターも内なる声との対話を通じて、独りよがりに物事を捉え、偏見と勘違いの連続によって世界が回っていることを客観的に私たちに教えてくれる。

人間関係は、誰一人同じポジションから同じ世界を見ることはできない。そんなことをくだらないギャグが散りばめられた会話と、ほのぼのした絵で優しく教えてくれる名著である。

星5つ。
★★★★★

【完結済み】COJI-COJI 1巻


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